I don't wanna be a Hero

  • 2016.09.18 Sunday
  • 01:05
「6才のぼくが、大人になるまで」と言う映画をやっと見た。

公開される前から見たいと思っていたけれど、ぼやぼやしている内に上映期間が過ぎてしまって。
一体何年こんな日々が続くんだろう?(笑)
見たい映画をこうして何本やり過ごした事か。
でもそろそろそんな日々に終わりを告げても良さそうな気配はしている。

12年もの時間をかけて、主人公の少年はもちろん彼を取り巻く全てのキャストを同じ人物で撮り続けた、ある意味夢の様な映画だ。
アイディアからキャスティング、設定、俳優陣の演技、どこを取ってもこれ以外に無いなあと思えるし、ある意味人の成長と言う誰にも予見出来ない材料が有るだけに、主役のエラー・コルトレーン君の成長の仕方に映画の方が寄り添っていってるような感じがした。

冒頭のシーンで、まだ6才のエラー君が芝生に寝転がって空を見ている所を上から撮っていて、彼の表情のアップから始まるのだけど、この時の彼の顔。
オーディションで選ばれたらしいが、あの瞬間で、ああなんて魅力的な子なんだろうと、がっしり心を掴まれた。
可愛らしいのだけど少し生意気そうで、完璧な美少年と言う訳じゃないのに目が勝手に追ってしまうような、そして少年のくせにちょっとアンニュイで。
エラー君がいた、と言う事実だけでこの映画は8割方成功したと言っても良いのかもしれない。

ストーリーは主人公のメイソン(エラー君)が6才の時、両親が離婚した後から始まる。
ハッキリとは描かれないが、若くして親になった両親、特に父親(イーサン・ホーク)は子供達に愛はあっても親になりきれず、定職にも付いていないような、大人になりきれない男。
母親(パトリシア・アークエット)は良い母親であろうと努力するが、仕事と家事と育児をこなすだけでヘトヘトになっている。
一念発起し、大学に入りなおし教師を目指すが、在学中に大学教授と恋に落ちて再婚…などなど、幼い頃のメイソンは親の都合であっちこっちと落ち着きのない日々を余儀なくされる。

メイソンには姉がいるが、姉は父親に似たかして割と自由奔放、私は私を貫けるタイプ。
それにひきかえメイソンは弱いという訳ではないが、攻撃的ではない為あまり感情を表に出さず、不平不満は腹の中に溜めている。
3時間近い映画の中で、メイソンが分かりやすく感情を露わにするのは二度程と言っていい。
後は大体つまんなそうな顔をして、ちょっと影があるんだけど、成長してくるとそこがちょっと魅力になって、わりかし女の子にはモテる。
少年が経験するような事は、一通り経験する。

そう、この映画は彼が劇的な事を起こすのではない。親の事情に巻き込まれて、元々感受性の鋭い少年が周りの大人の身勝手さ、愚かさ、やるせなさを浮き彫りにしていくのだ。
いつもは伏し目がちなその瞳で射る様に見られると、「大人」と言う強者であるはずの人達が、なぜだかちっぽけで哀れな存在に思えてくる。

少年と言う存在から見たら、なんと大人とは愚かしい生き物なのかと若干項垂れてしまった。
それ位あのエラー君の瞳は濁りが無く、美しい。

映画の最後の方で、大学へ入る為家を出る準備をしている時、不意に母親が感傷的になって、メイソンに感情をぶちまける。
そこでふと今までと違う瞳の表情を見せる。
車を運転し、とっくに童貞も捨て、奨学金を貰い、バイトで他の資金も賄った大人になった表情をする。
そこから先は素敵なエピローグだろう。車を運転するメイソンの横顔は、とても美しい。


そして全編を通じて音楽も素晴らしかった。
テーマソングでもあるfamily of the timeの「Hero」は、澄んだ空気みたいな汚れを知らない様な、きれいな歌だ。


サントラ盤買おうかなぁ…


個人的に同じ離婚経験者として、メイソンの母親が、結局2度再婚して、一度目の再婚相手(大学教授)は実はアル中のモラハラ男でこのまま行けばDVという事で離婚して、念願叶って教師の職に就いた後に出会った元軍人と二度目の再婚、当初は理解をしている振りをしていたが元はマッチョな思想の持ち主、メイソンの文系アート男子の気持ちなど微塵も分からない上、段々と父親の役割が重たくなってきて、こちらも破局。
…なんで、とツッコミを入れてしまったわ。
一度目の再婚はまあ、今度こそと思ってするのはまだ分かるけど、アル中モラハラの後に良くまだ男性に希望が持てたな!とかね(笑)

結局最初の夫(メイソンの実父)は、子供達がだいぶ大きくなってから屈託のなさそうな良心的な女性と再婚し、その後は以前からは想像も出来ない良いパパぶりを発揮する。
そうなってしまうと母親が男をダメにするっぽく見えてしまって、いささかかわいそうだが、タイミングというものがあるしね。
メイソンの母親は何もかも一遍に手に入れようとし過ぎたのかもしれない。

冷静な感想を述べればそうだが、茶飲み話の体で、更にアメリカ風に言わせて貰えば、
3人ともクソ野郎だったけど、最初のクソが一番マシだったって事だね!
とでも言う感じ。

フィクションが全てリアリティを追求すべき、とは思わない。
でも昨今の見かけだけの多様化で、一皮むけば特に中身は何もない、みたいな創作物が多い中で、大げさな事件が起きる訳じゃないけれど、人が一人大人になるという事のダイナミズムをじっくり感じさせてくれるような、こんな映画を見てしまうと…。

一瞬を掴み取るのでは無く、一瞬に絡めとられるみたい
そう、人生は今この瞬間の連続なんだ

若い人に言われると、余計身にしみます。


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  • 2017.10.16 Monday
  • 01:05
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    コメント
    真響さんお久しぶりです。
    だいぶ前の記事にコメントしてしまいますが、私も最近この映画観たもので‥。
    ちょっと特殊な映画ですけど、あぁやっぱり時々良い映画観るって必要な事だなぁーと思えた映画でした。
    少年のきれいな瞳と佇まいに魅了され、自分の子供時代や思春期を思い出し、子供のこれからの成長に思いを巡らせ(まだ小さい子供二人の育児中なもので)、母親の在り方ってものも考えさせられ‥、と、色んな視点で少年の成長を追っていたら、映画の尺も全然長いとは感じなかったですね。(私も、少年の実のお父さん終盤なんともいい感じで子供にとって癒やしみたいな存在になってて‥なんかズルいな!と思いました(笑))
    育児生活に入ってからすっかり映画や音楽と縁遠くなってますが、若い頃より多くの物を映画から受け取れるようになった気がするのは、歳をとる事の恩恵の一つかも(笑)

    真響さんの最近の一日一編に、共感したり心動かされたりしつつ、なにせ文才がなくてうまく感想が綴れないのがもどかしいです。でも、きっと真響さんはご自分のために言葉を紡いでいらっしゃるのでしょうね。自分を表現し、自分と向き合う、そのための手段をお持ちで羨ましいな、と思います。


    • rune
    • 2016/11/03 10:20 PM
    runeさん、お久しぶりです。
    お返事遅くなってすみません^^;

    とても良い映画でしたよね〜。
    なかなかお子さんが小さいと映画ってハードル高いですよね。
    私もこの10何年と言うもの、映画館で観るのは子供用のアニメ映画とかばっかりでした(笑)
    うちは来年恐らく高校生になるので、少し自由になるかなーと思ってますが、中々休みの日も上手いこと時間取れなかったりしてね、難しいですよねー( ; ; )

    私は自分と主人公の少年の母親の環境が似ているので、なんだか彼がまっすぐ見つめる瞳に何か問われているようにドキッとしてしまいました。
    あんな風に彼からは大人が見えているのだな、と思うと反省すると言いますか(笑)、大人などと言っても情けないものですよね。
    愛があるから情けなくもなるんですけど、ってこれは言い訳かなあ〜。

    最近は息子の受験なんかも重なって中々まとまった文章を書けなくてε-(´∀`; )
    何となく思った事を詩とも呼べない文にしてるだけなんですよー。
    そんな才能なんて言うような物ではないんです。
    でも感情って流れて行っちゃうじゃないですか、日常の波に飲まれてしまって。
    なんか少しでもその感情の断片を残せたらなぁと思っていまして、他の方から見たら何ともない言葉の羅列なんですけどね(^.^)

    runeさんにそんな風に思って頂けただけで、とても幸せです。
    ありがとうございます!
    またお時間ある時にでもお待ちしております。
    • 真響
    • 2016/11/09 12:22 AM
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