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    悠久の時

    • 2018.06.23 Saturday
    • 23:18
    映画『フジコ・ヘミングの時間』を観る。

    この余りに数奇な人については今更多く語るまでも無い。
    ただふと目にした映画の予告で、猫とピアノとアンティーク、私にとって心地良さそうなものしかなさそうだわ、と思って仕事帰りに足を伸ばして観に行った。

    何より印象に残ったのは、ピアノの前でのフジコさんの存在感である。
    あれだけ大きなフルサイズのグランドピアノの前に座って、ピアノ自体がもはや感じられないほどに、何か音を吸って増幅してでもいるかの様な感じがした。

    勝手なイメージではあるけれど、一般的なピアニストの演奏の場合、ピアノという黒と白とで構成させれているシンプル且つ難解な問題に対し、どの様なアプローチで解答していくかと言うような、磨き込まれた解釈の美しさの様なものを感じる事が多い。
    でもフジコさんの場合、あの年齢で現役のピアニストという事自体がまずもって異例だけれど、それ以上にピアノ自体への向き合い方が異質というか、独自すぎる様に見えた。
    あれだけでかいグランドピアノを喰う、と言うか、決して暴力性を感じるわけでは無いのだけど、弾けば弾くほど増幅する彼女の存在感にピアノが飲み込まれていく様な感覚になった。

    ラ・カンパネラはフジコさんの代名詞であるけれど、映画の中で昨日の私に一番心に入ってきたのはショパンの「別れの曲」だった。
    あの超有名な曲だけれど、ショパンらしいとても美しく叙情的な旋律が、時折少々大げさな、ドラマチック過ぎる様に思えてそこまで好きな曲でも無かった。
    でもフジコさんの別れの曲は、あの一番の山場の後の切ない旋律を、柔らかくサラリと弾いていらして、胸を引き裂かれそうな別れの後にのたうち回って号泣し、自分を憐れんで泣く様なイメージではなくて、淡々と生きながら働きながら、それと意識せず一筋涙を流す様な真実が感じられた。
    沢山の別れを体験し、見聞きしてきた年月の裏打ちを垣間見た様な気持ちになった。

    そしてやはり私の様なものがさすが、なんておこがましいけれど、世界各地のフジコさんの家がどれも素晴らしい。
    絢爛豪華と言うのではなく、パリならパリの、京都なら京都の、東京いや下北沢なら下北沢の、サンタモニカならサンタモニカのその土地の空気をそれぞれ感じ取り、体現した様なインテリアで、こんなことを言うのは絶望してしまうけど、センスとはあるものないものがハッキリしているものだと改めて。

    個人的にはサンタモニカのお家もとても好きだけれど、パリのお家がフジコさんには一番似合っていらっしゃるように思えた。

    何か少し切ない程に、お母様への愛を深くいじらしいくらい持っていらして、何とも言えない。
    一度お若い頃にピアニストとしての成功を断念せざるを得なかった頃、それから20年ピアノ教師として暮らしていらしたと言うが、そこから例えば別の人生を選ぼうとは思われなかったのか、少し聞いてみたい気持ちになった。
    例えば誰かと結婚したってピアノ教師はできただろうし、子供を持つことも。
    彼女のどこかでそういった普遍的なものの中に組み込まれる事を良しとしない気持ちの根幹に、お母様の存在があったのだとしたら。
    だからこそ今のフジコさんがあるわけだけれど、私が思っても仕方のない事ながら、やはり運命の天秤と言うか、そうせざるを得ない道のりと言うか、単純な良し悪しだけでは語れないものを感じる。

    フジコさんを見ていたら、人の中に本来流れていたはずの悠久の時間みたいなものをすごく感じた。
    大きな大きな、人知を超えて存在したはずの悠久の時。
    いつからかそんな時を抱えて生きる人が少なくなってきて、いずれどこにも居なくなってしまうのかもしれない。
    私ももしかしたら既に手離しているのだろうか。気づいていないだけで。

    悲しい事がない人生って言うのもどうかと思う センチメンタルなのもいいじゃない
    この言葉は忘れないように生きていこうと思う。

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