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    四季の国・第2章

    • 2018.11.20 Tuesday
    • 00:04

    時計をまた今に戻します。
    今日は待ちに待った夏至祭の当日です。国中から人々が集まってきました。
    皆思い思いに着飾り、歌い、既に酔い始めている者すらいます。それもこれも年に一度の夏至祭だからこそ、皆目一杯羽目を外すのです。
    そして何より人々が楽しみにしているのが、毎年披露される王子達の舞でした。夏の王子と春告の王子は共に舞の名手でした。毎年この夏至祭で夏の盛りを寿ぐ舞を披露するのです。
    王子達の舞に国中の人々が夢中になり、共に踊り出し、若い娘達などは美しい兄弟の躍動する姿についうっとりしてしまうのでした。

    日が沈み始めると、夏至祭の始まりです。
    中央に組まれた櫓に火が灯され、たちまち大きな炎となり、同時に一同に集まった人々から大歓声が上がります。
    間髪入れず音楽が始まりました。皆炎を取り囲み、大きな輪となって踊り出しました。これから三日三晩踊り疲れては眠り、起きると同時に踊りだすのです。
    月が真上に昇る頃、いよいよ王子達の舞が始まります。
    二人は特別に作られた舞台の上へと上がります。人々の期待が高まり、炎の熱気が渦となって最高潮に達しました。
    音楽がかかると、二人は期待通り、いや期待以上の舞を見せ、人々の熱は天を突くかと思うほどに盛り上がりました。
    冬の王と秋の王妃も貴賓席からその舞を堪能し、二人でこの世の幸せと言うものの真髄を味わっているかのようでした。
    王子達の舞は大盛況のうちに終わりましたが、まだまだ宴は止みません。音楽は鳴り響き、人々は彼方此方で輪舞を舞います。夏の王子は踊り終えたばかりだというのに、皆にせがまれ輪舞に加わりました。春告の王子は心地良い疲れと共に、その光景を見守っていました。
    その時です。不意に春告の王子は心臓が大きく脈打つのを感じ、思わず胸に手を当てました。その直後、宴の喧騒の最中だと言うのに突然の静寂に包まれ、水音を聞きました。一つ、二つ雫が水面に落ちていく音が聞こえました。
    気がつくとまた喧騒の中におりました。春告の王子は周りにいた者に水音が聞こえなかったか尋ねましたが、誰もが首を横にふります。思い違いかと思った時、再び水音が聞こえます。呼んでいる、と春告の王子は感じました。水音が自分を呼んでいる、そう思った時既に王子は人々の踊りの輪を一人離れ、水音に導かれるまま静かにその場から姿を消しました。
    王家の人々も他の者も皆、饗宴の中で誰もがその事に気がつかず、ただ一人春告の王子が消えた事に気がついたのはクロエだけでした。

    その頃、宵闇の森では生死の泉が地を割き、木を押しのけて湧き出ておりました。
    丁度月が真上に昇った時、泉が満ちて水面から真白い手が水をかき分けました。
    死せる者の国の女王です。
    女王はまず生死の泉でたっぷりと、30年の時を洗い流し、これからの戦いに備え活力を体の隅々にまで行き渡らせました。
    もう30年前のような失敗は、今回は起きないだろうと女王は確信しておりました。
    と言うのも30年前、冬の王はこの生死の泉の水を飲みましたが、数日寝込んだだけで若さは失われず今まで過ごしてきていました。
    金の雄鹿に追い払われた女王でしたが、あの時同時に冬の王の体内にあった泉の水に呼びかけたのです。
    今は待て、やがて呼びかける時、必ずお前の宿っている者を私の元に寄越すのだ、と。
    泉の水は数日冬の王の体を調べ、いずれその子へと繋がる場所へと潜んだのです。そしてある時、泉の水は王妃の胎内を通って生まれ落ちる子の体の中へと潜り込んだのでした。
    その子は春告の王子でした。
    泉の水は春告の王子の成長と共に、少しずつ移動しました。そして今年、来るべき女王の来訪の為に春告の王子の心臓へと移り住み、今はまるで小さなダイヤの雫の様な有様で、王子の拍動に合わせて震えているのでした。
    女王が一声かければ、春告の王子はもう意のままに操ることが出来るでしょう。女王は身のうちに滾る黒い欲望が地下のマグマのごとく、噴火の時を待ち焦がれているのをひしひしと感じました。
    渇望と言うのに等しいほどの切実さで、女王はこの四季の国を欲しておりました。女王はあまりにも、あまりにも長く生き続けたが為に自分が何処から来た者か、とうに忘れておりましたが、本来ならば季節の王家にその名を刻むはずでした。
    死せる者の国の女王は、初代季節の王家の姫君だったのです。
    幾百年もの昔、この地は小国同士が無益な争いを繰り返し、天は雲低く垂れ込め大地は数多の人々の血で汚れ、痩せた土地で育つものも濁った水に生きるものも無く、人々の心も同じように荒んでおりました。
    あまりの無法さに天の神と地の神は耐えきれなくなり、いくつかの国の長の中で賢き振る舞いができると見込んだ長に問いました。我々が与え給うた土地と空とをこれ以上穢されるのは見るに耐えない、そなたがこの争いを治めることを約束するならば我らはこの世に四つの季節を与え、またそれを齎す力をそなたの一族に授けよう、と。
    その長は神からの啓示を受け、諸国の平定を約束しました。神は平和を望まれましたが、如何なる和睦にも応じない者との戦いのためにと、一つ剣を授けました。
    長は諸国を渡り歩き、時に力強く説得し時に粘り強く交渉し、また致し方ない時に限りその剣を用いて、数年かけて今の四季の国を全て治めるが出来ました。
    天の神地の神は共にその成功を喜び、約束通り長の一族に季節を齎す力を与えようと言いました。
    長は初代春告の王となり、その妻は初代夏の王妃に、一番目の息子は初代秋の王子なりました。残る冬は誰に授けるかと神に問われた時、初代春告の王は頭を悩ませました。初代春告の王には初代秋の王子の他に娘がおりました。しかしまだほんの赤ん坊ですが、つい先頃二番目の息子が生まれたのです。
    娘はとても賢くまた器量良しで、人々から好かれてもおりました。しかしやはり娘です。いずれどこかへ嫁していくことを思うと、生まれたばかりとは言え二番目の息子の方が良い様に思いました。
    そして二番目の息子を冬の王子にして欲しいと神に申し出ました。地の神は本当にそれで良いのかと尋ねましたが、初代春告の王は娘はとても賢いからこの選択も理解してくれようと思っておりました。
    二番目の息子は初代冬の王子となりました。
    初代の王の目論見は全く外れました。
    自分が冬の姫君となれなかったと知った娘は、今まで見たこともない剣幕で父親である初代の王を責めました。
    女であると言うだけで、私が赤ん坊より劣るとは天地がひっくり返っても許し難いと髪を振り乱して怒りました。初代の王は娘の変貌に内心たじろぎました。賢き姫君の中に、ここまでの誇りがあるとは思っていなかったのです。
    何日経っても姫の怒りは収まりません。初代の王はまたしても間違いを犯します。暴れて収まらない姫を塔の片隅に幽閉しました。しばらく一人で頭を冷やした方が良いとの考えでしたが、冷たい石壁と昼でも薄暗い塔の中は姫の孤独と怒りをより深く黒いものにしていくのに十分でした。
    昼も夜も分からず何日閉じ込められたのか分からなくなった頃、部屋の隅、より一層闇の濃いところから声がしました。
    その声は姫がどれだけ優れているか、こんな仕打ちを受けるべきは姫ではなくあの父王ではないか、赤ん坊如きに何ができると言うのか、あの兄だって姫に比べたらどれだけ能無しかなど、姫の心が欲する事を次々と囁きました。
    そしてその声は闇の中から姿を現しました。それは黒衣を纏った姫君自身でした。私と一緒になれば怖いものは何もない、天の神も地の神も私と姫君が一体となれば恐るるに足りないと耳元で囁きました。
    姫は腹の底がぐつぐつと煮えるように熱いのを感じ、矢も盾もたまらなくなり遍く全ての者に響き渡るように叫びました。
    天を呪い地を呪い、我が一族を永遠に呪い続けよう、我が魂は闇と一体とならん、と。
    忽ち空はかき曇り雷鳴が轟き、地が避けました。姫君の呪詛を聞き届けた神々は稲妻で塔を破壊し、姫の背中にこの地上で生きる事を許されぬ烙印を押しました。
    事ここへ来てようやく己の愚かさを知った王は、姫をなんとか生かす道として地下の国、死せる者の国を与えました。姫は地の裂け目から死せる者の国へと送られます。その際に初代の王家の術師が姫が地下へと入った後、地の口は閉ざされ戻っては来れぬと結界を張りました。しかし姫は結界が完成する前に、夏至の頃にはその口が開き、死せる者を生かす泉が湧く、また王家の者が自ら我に身を捧ぐ時結界は砕かれる、と術返しをしたのでした。
    更なる術を施す前に結界は完成してしまい、地の口は固く閉じられました。
    術師は夏至の頃に湧く泉を隠すため、辺り一帯を深い森で隠し、また念のため金の雄鹿を呼び出してこの森の番を頼みました。
    それ以来何百年と経つうちに、女王は出自を忘れ、身に残るのは内側から焦げ付くような憎しみだけとなりました。
    もう今となってはなぜこの地上の国がこんなにも憎いのかは分かりませんが、 ただただこの地上を光差す所無き暗黒の闇へと突き落としたいばかりです。
    たっぷりと生死の泉に使った女王はそろそろ頃合いだと、春告の王子に向かって呼びかけました。
    こちらへおいで、早く。

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