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    四季の国・第4章

    • 2018.11.23 Friday
    • 23:47

    冬の王の間では夏の王子と春告の王子の身を案じ狼狽える秋の王妃を慰めるため、クロエが側に付いておりました。
    そこへ兵が取り乱した様子で飛び込んできました。そして王子二人と死せる者の国の女王が王の間へとやって来る事を知らせました。知らせを受けた冬の王とアルフレッド、その他の重臣達も王の間へと駆けつけました。
    固唾を飲んで待つ一同の元にまず夏の王子が、続いて死せる者の国の女王と捕らえられた春告の王子が現れました。
    女王は手下の者に春告の王子の拘束を解かせ、部屋の外で待つ様に命じました。
    それから冬の王の間へと集う一同を、ぐるりと見回すと、女王の視線の冷たさに皆思わず体が固まってしまいました。
    冬の王が名乗り出て、如何なる目的があってこの四季の国を襲撃したのか問いました。女王はゆっくりと部屋の真ん中まで歩を進め、王に言いました。
    よもやお忘れではあるまいか、30年前泉の辺りであと少しで愛を誓おうとした事を、と。王はもちろん覚えておりました。それから女王は続けて言いました。
    あの時お前が飲んだ泉の水は、お前からその王妃の体を通って、この愚かな王子の体へと入り私の意のままに操ることが出来た、礼を言おう、と言ってさもおかしそうに笑いました。
    冬の王は自らの些細な行動が、我が息子に悲劇をもたらしたと知り、目の前が真っ暗になりました。そして女王に向かい、我が命と引き換えに家族と人民を救って欲しいと願い出ました。
    しかし女王はこの願いを一笑に付し、我が願いはこの国とこの国の民全てが絶望の軛に繋がれる事、生きても地獄死んでも地獄、苦しみと飢えの中であげるお前達の呻き声を永遠に聞き続ける事だ、此の期に及んで助かる道などあるものか、と冬の王に向かって恫喝しました。
    その場にいた全員が女王の狂気の剣幕に震え、慄きました。
    そして女王は玉座を指し、あの玉座はもうお前のものではないと冬の王に向かって言い、それから玉座に向かって歩きだしました。そうはさせまいと夏の王子は女王に向かって斬りかかろうとしました。
    その時です。なんと春告の王子が女王と夏の王子のあいだに割って入りました。
    そして兄にこの人を殺さないでくれ、と懇願します。夏の王子もその場にいた人々も、ましてや死せる者の国の女王でさえ、この春告の王子の願いに驚きました。
    夏の王子は春告の王子が理解できず、弟に退けと命令しますが、春告の王子は聞きません。そして私はこの人に永久の愛を誓ったと言うのです。
    そこでアルフレッドが春告の王子に、それはあの女王の術に惑わされていたが故です、真実の愛ではありませんと言いました。
    それでも春告の王子は首を横に振り、確かに呼ばれはしたが、女王を一目見た時既に私はこの人を愛したのだ、と言い張りました。この告白に一同はどよめきました。そしてそのどよめきの中、クロエの心は一人全く別の衝撃を受けておりました。
    そしてまた女王も既にこの王子には術を掛けていない筈、と顔色こそは変えませんでしたが、理解し難い春告の王子の告白に少なからず動揺しておりました。
    そして愚か者めが、この様に扱われ、民を殺されても目が覚めぬとは、と春告の王子に吐き捨てて、玉座へと上がろうとしました。春告の王子は女王を追いかけ、腕を掴んで言いました。貴女がどんな人でも構わない、私は貴女を今もこれからも愛しているのです、と。女王の中で小さく何かが壊れる音がしました。それはとても女王を恐れさせました。思わず春告の王子の腕を払いのけます。
    隙が生まれたと見た夏の王子は、ここぞとばかりに斬りかかりに来ましたが、またしても春告の王子が盾となり、女王を守ります。女王は春告の王子の背中を見ながら、自分の中で怖れが大きくなるのを感じました。
    しかし本当に怖れを感じていたのは女王の中の闇でした。闇はこれ以上怖れを感じている事が我慢なりません。すると玉座の上に剣が飾られているのが見えました。初代の王が天と地の神から授けられたあの剣です。死せる者の国の女王は剣を手に取ると、春告の王子の背中に剣を突き立てました。
    クロエは叫び声を上げ、気を失ってしまいました。
    女王は背中から剣を抜くと、これでもう戯言も言えまい、春告の王子に言いました。春告の王子は苦しみながらも、女王を抱き寄せて言いました。それでも貴女を愛している、と。
    その言葉を聞いた女王は、いや女王にしがみ付いて来た闇との絆は完全に砕かれてしまいました。闇の力はもう女王の体に取り付いている事が出来なくなり、抜け出ていこうとしますが、何百年と体の隅々まで結びついていた女王の体からすんなりと出る事が出来ません。黒い大きな塊が女王の体から離れようとしては引き戻され、戻ろうとしては引き剥がされを繰り返します。女王は体を引き裂かれんばかりの壮絶な痛みに、のたうち回りました。
    人々は目の前の光景に怖れをなして、目を瞑る者や顔を覆い隠す者もおりました。そしてどれくらい時間がかかったのでしょうか、女王の体から闇が全て出て行くと、後には白衣を纏った塔に閉じ込められる前の姫君の姿がありました。
    呆然と立ち尽くす夏の王子の横を抜けて、痛みを堪えながら春告の王子は姫君を抱きかかえました。闇の力によって生かされてきた姫君は、その力を失った今、待つのは静かな死だけです。姫君はこの世で一番強く自分を愛してくれた春告の王子の顔を見つめ、優しく微笑み、そして息絶えました。そして春告の王子もその微笑みを見届けると、ついに力尽き、二人の体は重なり合ったまま深い地の底へと吸い込まれていきました。
    二人が消えた後には、雫の形をしたダイヤが一つ遺されました。


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